甦る古代金堂 慧日寺金堂の復元【第9回】 現地組み立て その3
印刷用ページを表示する 掲載日:2015年11月12日更新
柱上に組物が組まれると、屋根を受ける軒回りの工程へと移っていきます。
軒は通常、丸桁(がぎょう)に垂木(たるき)や厚板を打ち付けて持出され、軸部を雨風や雪さらには夏の暑い日ざしなどから護る役割を果たしています。軒の出を大きくするために、軒を二段(二軒)や三段(三軒)にする場合もあって、復元金堂は二軒の垂木軒が採用されています。
また、軒の四隅には、45度方向に延びる「隅木(すみき)」と呼ぶより大柄の材が設置されます。
軒回り工程に入る前の状況 隅木(すみき)の設置
丸桁に載った垂木 垂木組(たるきぐ)みの様子
二軒にするため、地垂木の先端に木負(きおい)という部材を載せ、 飛檐垂木(ひえんだるき)を継いでいきます
化粧屋根裏
復元金堂の内部は、天井板を張らず垂木をそのまま見せる化粧屋根裏天井という様式のため、屋根の裏板には内側に白色顔料(胡粉(ごふん)を塗布しました。
化粧屋根板を垂木の上から縦に打ち付けていきます内部から天井を見上げると、化粧裏板の白と化粧垂木の赤が見事なコントラストを織り成しています。
内部から見上げた化粧屋根裏天井
隅延(すみの)びの技法
寺社建築の意匠の特徴の一つに軒の反りがあります。軒反りは屋根の先端部だけを反らせるよりも、建物の中から反らせた方が、より流麗な美しさを醸し出すことができます。そのため、柱本体の長さを変えて配置し、軒の内側から反りを作り出していく方法があります。この技法を「隅延(すみの)び」と呼びます。
一般的には中世以前の建築に見られるもので、意匠上の理由のほかにも屋根の荷重などからくる隅柱の不同沈下に対応する技法とも考えられています。
隅延(すみの)びの状況は、それぞれの柱を差し通してつなぐ頭貫が、両端にいくにつれてしなやかに延びあがっている様子から見ることができます。