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史跡慧日寺跡
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甦る古代金堂 慧日寺金堂の復元【第5回】 塗装 その1 赤

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年11月16日更新
~甦る古代金堂~ 慧日寺金堂の復元

寺社建築の外観を彩る鮮やかな赤色。赤は一般に魔よけの意味合いがあると言われていますが、実は木材の腐食防止や防虫対策にも大きな役割を果たしています。

ところで、一概に赤といってもさまざまな色があって、例えば赤色粘土や赤鉄鉱(せきてっこう)を砕いた「ベンガラ」、辰砂(しんしゃ)や朱砂(しゅしゃ)とも呼ばれ、水銀を含む鉱物からつくられる「水銀朱(すいぎんしゅ)」、鉛を熱して生成する明るいオレンジ色の「鉛丹(えんたん)」など、素となる成分によって発色が異なります。しかもこれらを混合して使用することも多いようです。

社寺建築のさまざまな「赤色」、 天候によってもさまざまな色に見えます
復元された平城宮の朱雀門の写真 復元された平城宮の朱雀門 ベンガラ系の顔料を使用復元された下野薬師寺跡の回廊の写真 復元された下野薬師寺跡の回廊 やや黒味がかった「赤」春日大社回廊の写真 春日大社回廊(重文) 耐候性塗料を使用清水寺田村堂の写真 清水寺田村堂(重文) 青空に映える丹塗り

復元される金堂では、わが国で最も古くから使用されてきた赤色顔料であるベンガラを用います。

本来、ベンガラは鉱物から作られる伝統的な顔料で、赤い粘土や赤鉄鉱(せきてっこう)などを粉末にしたものと、黄土や褐鉄鉱(かってっこう)を焼いて酸化させて発色し粉末にする方法があります。したがって、黄味(おうみ)がかった赤から茶や黒味がかった赤までさまざまです。また、これらの顔料は膠(にかわ)で溶いて塗布されるのが古来の一般的な方法ですが、長い年月の間には色褪せ(いろあせ)や塗装の剥落(はくらく)が起きます。

現在では経年変化や気候に対応した耐候性(たいこうせい)の塗料が開発されており、今回はそれらの色見本を見ながら検討を行いました。その結果、色落ちや管理面の配慮から、頭貫(かしらぬき)以下の部分には耐候(たいこう)塗料を用い、頭貫(かしらぬき)より上位は従来の膠(にかわ)仕様の塗装とすることに決定しました。

検討作業の様子の写真
耐候仕様と膠仕様の色見本を並べ
検討を重ねました
耐候ベンガラを塗装している作業の写真
耐候ベンガラを2回塗装します
塗装が終わった36本の柱の写真
36本すべての柱に塗装
【塗装顔料リスト】
塗装顔料リストベンガラ耐候
(たいこう)
軸部(じくぶ)、長押(なげし)、
建具、連子窓枠(れんじまどわく)

(にかわ)
組物(くみもの)、 軸部(じくぶ)
黄土
(おうど)

(にかわ)
垂木木口(たるきこぐち)
隅木木口(すみきこぐち)
丸桁木口(がぎょうこぐち)
虹梁木口(こうりょうこぐち)
胡粉
(ごふん)
耐候
(たいこう)
床下換気口

(にかわ)
化粧屋根裏
緑青
(ろくしょう)
耐候
(たいこう)
連子格子(れんじこうし)

甦る古代金堂 慧日寺金堂の復元シリーズ

第1回 基礎工事
第2回 原寸図の検討
第3回 屋根材の加工
第4回 柱材の加工
第5回 塗装 その1 赤
第6回 現地組み立て その1
第7回 塗装 その2 緑・黄・白
第8回 現地組み立て その2
第9回 現地組み立て その3
第10回 現地組み立て その4
第11回 現地組み立て その5
第12回 現地組み立て その6
第13回 現地組み立て その7
第14回 現地組み立て その8
第15回 現地組み立て その9
第16回 金具・須弥壇の漆塗り
第17回 現地組み立て その10
第18回 竣工
第19回 落成式
第20回 一般公開

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