甦る古代金堂 慧日寺金堂の復元【第7回】 塗装 その2 緑・黄・白
第5回に引き続き、金堂の塗装について紹介します。
復元される金堂では、連子窓(れんじまど)には緑、垂木(たるき)や虹梁(こうりよう)などの木口(こぐち)には黄、化粧裏板や床下換気口には白が塗装されます。これらの元来の原料としては、緑色顔料が岩緑青(いわろくしょう)と呼ばれる鉱物、黄色顔料は黄土。そして、白色顔料としては白土や、カキやハマグリなどの貝殻を露頭(ろとう)でさらし、風化して白くなったものを砕いてつくった胡粉(ごふん)と呼ばれるものを使用しました。
ベンガラを塗装 連子(れんじ)窓(まど)の鮮やかな緑色
木口(こぐち)に塗られた黄色 床下換気口の白色
顔料は、もともと土・鉱物・生物など、自然界のいろいろなものを原料としていました。第5回のリストにも載せたとおり、今回の工事では、色落ち・管理の配慮から、人工の耐候塗料も併用しています。
顔料は染料と違い、もともと水に溶けにくい性質を持っています。したがって、無理に絵の具のように水で溶いて塗ったのでは、乾いた後剥(は)げ落ちてしまいます。
そのため、古代から膠(にかわ)という固着剤を混ぜて塗る方法が採られてきました。膠(にかわ)は鹿・牛・ウサギなど、動物の生皮や軟骨を煮てつくるいわば強力な接着剤で、主成分はコラーゲンというタンパク質の一種です。古代エジプトの壁画など、世界各地でも使われてきました。乾燥させると硬いゴムのような状態になり、それを細かく砕くとザラ砂糖のようにも見えます。この膠(にかわ)を一晩水につけて寒天状(かんてんじょう)にし、それを湯せんして溶かし、布で漉(こ)します。そうして軟らかくなった膠(にかわ)を、顔料に少しづつ加えながら溶いていき、塗りやすい濃度にして使うわけです。混ぜ方や水加減により、定着や発色まで変わってくるといい、かなりの熟練が必要とされます。
金堂の塗装には、牛からつくった 膠(にかわ)が使用されています
展示品のお知らせ
慧日寺資料館に塗装色見本と建築材の一部を展示しています。
ヒノキの柱材など、実際に手にとってご覧いただけますので、是非ご来館ください。