甦る古代金堂 慧日寺金堂の復元【第4回】 柱材の加工
今回は、柱材の加工について紹介します。
母屋柱・側柱に使用される直径一尺二寸~三寸(約36~39cm)の材を採るために、根本直径が1mに近いヒノキの原木が調達されました。金堂は全体で36本の柱によって構成されますが、各柱とも横架材との取合い、礎石への据付け状態を確かめながら位置や向きを決定します。したがって、仕上げ加工前には、すべての柱の配置が決められることになります。
ヒノキの原木
原木をおおよそ40cm角に製材し、背割りを入れてしばらく乾燥します
丸柱を作るには、四角に製材した材木を8角、16角、32角の順で角を落としていき、最終的に丸形にしていきます。その後、表面をやり鉋(かんな)で仕上げます。
4角から8角に《帯ノコで角を落とします》
8角から16角に
8角から丸にはプレーナーと呼ばれる加工機で削っていきます
32角から丸柱に
やり鉋(かんな)で表面を仕上げます
柱は一つ一つ形の異なる礎石の上に立てられるため、一本づつ仮立てをして、前後左右を決めていきます
配置を示す墨付けを行います
ヒノキの話
ヒノキと聞いて真っ先に思い浮かぶのは「木曾ヒノキ」。古くよりわが国の神社・仏閣はこぞって建築材に使用しました。ところが、戦国の世が終わり、江戸時代初めに迎えた未曾有の建築ブームが木曾ヒノキに枯渇をもたらしました。尾張藩は厳しい森林保護政策を打ち出して、明治初期までには木曾谷に6万2千haのヒノキ林が戻りましたが、その後の材木需要によって現在はその1月3日にまでに減少しています。このままでは50年足らずで底をつく試算もあります。木曾のほかにも、紀州や吉野・尾鷲などの産地がありますが、蓄積量はそう多くありません。金堂には木曾と並ぶ天然林産地として有名な、土佐のヒノキが使われます。貴重な国産ヒノキの伝統を受け継ぐ建物として、後世に長く守り伝えていくことが必要です。