度胸ばなし/磐梯町の伝説と昔話

度 胸 ば な し
あったどよ。
ある山奥にナ、一つの村があったど。
その村にはナ、毎晩、毎晩、真っ黒な頭に真っ黒な顔で、目も鼻も無ぇノッペラボウの化け物が出てでナ、村の人達が困っていただど。
そんな村の人達はナ、皆まだ明りうぢに、まんま喰って、
晩方になっとそこらの中の戸たてで家の中で一固まりになって、ブルブル震えていただど。
そんじぇ、夜中の一時、二時頃になっと、化け物がまた一軒、一軒ナ、
「あぶねぞ、あぶねぞ。」 ってゆってナ、
鉄の棒、ガチャガチャ鳴らし鳴らす廻ってくんだど。
いやぁ、その声おっかねぇごど、おかねぇごど、
その音の気味悪いごどナ、毎晩、毎晩だから、村の者は生きたそらがねがっただど。
さて、そごで、村の人達は
「何か、いい方法がねぇもんだべがな。」 と、相談したげんじょも、だっちぇも音出す者がいねがっただど。
そうしたらな、一人の度胸のいい男が居でな、
「よし、俺が化け物の正体、掴んでくれっから。」 つって、暗くなんの待ってただど。
その内に夜中になって、辺りが真っ暗になってシーンとして、
物音一つしねぐなった時、その化け物が出てきただど。
「あぶねぞ、あぶねぞ。」 って、
鉄の音をガチャガチャ鳴らして行ぐ化け物の後を男がソーッと追っ掛けで行っただど。
その化け物の速ぇごど、速ぇごど、
ずんずん、ずんずん、山の方さ行ぐだど。
その内に谷さ掛がった1本の橋渡って、
どこまでも、どこまでも追っかけて見たっけが、
やがて今にも崩れそうな崖っ淵のどごで、化け物がスーッと消えっちまっただど。
「こりゃ、きてぇだな。」 と思ってその辺りんどこよーく見たっけが、
何だか眩しく光るものがあっただど。
「ハーテ、何だべな。」 と思って見たっけが、
ピカピカ光る金の山があっただど。
金神様が、それを教えだぐって、教えたぐって、
毎晩、村の人達さ声掛けていたわげだげんじょ、だっちぇも分かんねで、
度胸の良い男はお蔭で一散に大金持ちになっちまっただど。
あったど昔、さげぇました。