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山姥/磐梯町の伝説と昔話

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年11月1日更新
磐梯町の伝説と昔話

 

山姥

むかし むかし あったどよ。

村のはじっこの一軒屋に、ケチンボ男がいだっけど。

人に呉れんのは鼻くそでもいだましい(惜しい)って、むずせ(可哀相)人がなんぼ(何人)いても、助けんべなんで思ったこどは、ひとっつも無かったんだど。

したげんじょ(だけど)、だんだん年とってきたれば嫁様欲しくなってきたんだど。

だけんど、ケチンボだからホレ、まんま(飯)も喰うべし、赤いしょ(綺麗な着物)も着てぇっつうでは大変だから、 まんまも喰わねし赤いしょもいらねつう嫁様いねべがなぁって思ってたんだど。

いつごろだったのがなぁ。

晩げ、ケチンボ男がまんま喰っちまって、ゆるり(囲炉裏)の端であだっていたらはんど口の戸を、ドンドン、ドンドンってぶる奴がいたんだど。

いまっころ、だんじゃべ(誰だろう)なと思っえてゾウリ履いでニワさ落っちぇ、
ガラッと戸を開げだら、うづぐしい(美しい)いしょ着た、めげぇおなご(かわいい女)が立っていだったづもなぁ。

男はハァー、ぶったまげて

  「何だべ。」 って聞いたれば

「こっちの家では、まんま喰わぬ嫁様欲しいってゆわるそうで、   
私はまんまも喰わねし、着物もいらね。
仕事も一所けんめ(一所懸命)しっから(やりますから)、   
何とかこっちの家の嫁様にしてもらわんにぇべが。」
っつうごどだっだんだど。

男は
「こんなめげぇー姉様が、まんまも喰わねぇでよぐ嫁ぐどすれば、儲けもんだわ。」
と思ったがら、うっつぁ(家)上げて、こんにゃは泊まってもらぁごどにしたんだど。

あしたの朝げ、男が目覚ましてみだら、
ゆんべの姉様はまんまこしぇで(作って)、はんでぃ(飯台)の上でお汁もまんまもカッカと息あげでいだんだど。

いままで一辺も人にこせぇで貰ったごどねぇまんま、息で吹き吹き喰ってみだら、
男は
「こんなうめぇもんはねぇ。 その上まんまも喰わぬ嫁様では願ったり叶ったりだ。」
と思って嫁に貰うごどに決めたんだど。男

せぇがらっつうもんは、毎日毎日、男は畑さいぐし、嫁様は家で仕事してまんまもこせぇで稼ぐもんで、
男はとでも喜んじまったんだど。

男は
「俺が願ってだ、まんま喰わね嫁様貰ったし、今にきっとしぁーわせ(幸せ)になんべ。」と思っていたんだど。

せぇがら十日も過ぎだころだべが、いや、二十日も過ぎだころがな。

男は嫁様のいねぇどぎ、米びつの蓋あげて、なが(中)見たんだど、
見っとすぐ、ケチンボ男は「アレッ」と思ったづもなぁ。

わがひとんじぇ(自分一人で)いだころがら見っと何だって早ぐ米びつの米、減っちまっていだっつもなぁ。

ケチンボ男だから、すーぐ気付いたんだべな。

せぇがらっつうものは、嫁様のいねどぎ、こっそりど米びつん中見てみっど、見るたんびに、その減りがだが早ぐなったづもなぁ。

ハーデ、こりゃおがしぞ(おかしぞ)と思ったがら、
いつかめっけでくれんべと思って、でぇどころ(台所)の脇の物置の壁さ、こそっとでぇどころ覗っこむ穴こせぇでおいで、

朝げのまんま喰っでがら

「おれ今日、まっつぁ(町に)用足しに行ってくっから、昼のまんま、こせぇねっていいぞ。」
つって出かけるふるして、 こそーと戻ってきて、のぞこみ穴からでぇどころ方を見でいだっつもなぁ。

男が町の方さ行っちまった頃になったれば、男の嫁様、大急ぎで「たしこ」せなが(背中)さかげで、
でぇどごろの隅っこさあった一番づねぇ(大きい)鍋出してきて、
米びつから丼でザクッと米掬っては鍋さ入れ、ザクッと掬っては鍋さ入っちゃずもなぁ。

みでだ(見ていた)男は

「何しんだべ、あの米。」 と思っているうちに、流しでザクザクと米とぎはじめだんだど。

まっしろぐなるまでとぐど、水入っちぇ、ゆるり(囲炉裏)でドンドン、ドンドン火焚いで、まんま焚きはじめだっつうもなぁ。

ケチンボな男はこれ見ではじめで、 米びつの米がめぇより(前より)早ぐ無ぐなんのは「こんじゃな。」と気がついたんだど。

そんじぇも、いたましげんじょ(勿体ないが)も、我慢して見ていたんだど。

よっぽどすぎで、まんまが鍋おどす(下ろす)ど、
はんでぇの脇さ持ってきて、鍋の蓋とったら、ポーポーと息立って美味そうなまんまになっていたづもなぁ。

せぇがら嫁様は、
まんまの冷めた方がらヘラで掬って、手の平さ上げでがらギュッギュッと握り飯に握ったづもんなぁ。

でぎた(出来上がった)握り飯をはんでぇ(飯台)の上さ並べては、また握ったんだど。

握り飯

鍋のまんまが空っぽになっと、

手洗った嫁様、鋏もってきで頭の元結いパチンと切って、
ブルッと頭振ったら頭の毛がバッサラと広がって、
その頭の真ん中にとでつもねぇ(とんでもない)口がパックリ開いてたんだど。

男は、まんまはいたましげんじょ(勿体ないけれども)頭の上に口のある嫁様はおっかねぇしで、ハァ、困っちまったんだど。

そのうち嫁様は、握り飯を掴むと、
そいづを頭の上の口さ喰わせっど、また別の握り飯掴んでは口さ喰わせだっつもなぁ。

男はまんまがいたましぃこどど、頭でまんま喰う嫁様がおっかなぐなって、じっと我慢していたげんじょも、我慢でぎなぐなって「アーッ」って声出しっちまったんだど。

したらば(そうしたら)、花嫁はまんま喰うのをやめで、後ろ向いだがどおもったら、
「見だなぁー。」ってゆった顔は、
あんなにめごい花嫁が山姥になってしまって、まるっきし鬼の顔だったど。

男はこんじぇは大変だと裏口から逃げ出で、
どんどん どんどん山の方さ逃げていったげんじょ、山姥の方が足が早いもんで、

こんじぇは逃げぎんにぇと思ったがら途中の道端の菖蒲の葉っぱの先の方結んで、わんな(罠)こせぇで逃げたんだど。

したらば、後ろ追っがげてきた山姥、
男がこせぇだわんなさ足ひっかげでズドンとめぇさ(前に)つんのめったんだど。

その拍子にもちぐさの刈り株さ、目、じゃっかり刺さったもんで、目がめえなぐなっちまって、どごさ行ぐどもなぐ、山の方さ、グラグラ、グラグラど行っちまったんだど。

男はそこでやっっと目ぇ覚めだみでぇに、これがら先は決っしてケチンボは止めんべ、
むずせぇ人には米でもぜに(お金)でも呉れてやんべって決めたんだど。

さっと昔、さげぇました。(栄えました。)

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