農業所得等の申告に関する減価償却費の計算方法が変わります
平成19年度税制改正により、農業・営業・不動産所得などを申告する際、平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産については、償却可能限度額(取得価格の95%)と残存価額(耐用年数経過時に見込まれる処分価額)が廃止され、「新たな償却の方法」により耐用年数経過時点において1円(備忘価額)まで償却されることとされました。
また、平成19年3月31日以前に減価償却資産についても、償却可能限度額に達した後の計算方法が変更となりました。
1. 平成19年4月1日以後に取得した資産 →「新たな償却の方法」により計算
【計算式】
減価償却費の額=取得価額×償却率×使用月数×12ヶ月×事業専用割合
※「償却率」は、減価償却資産の耐用年数によって異なります。
【計算例】
取得価額:1,000,000円 取得年月日:平成19年4月1日 耐用年数:10年
償却率:0.1 事業専用割合:100%
※減価償却費
【平成19年分】
1,000,000円×0.1×9ヶ月/12ヶ月×100%=75,000円
【平成20~28年分】
1,000,000円×0.1×12ヶ月/12ヶ月×100%=100,000円
【平成29年分】
{1,000,000円-(75,000円+100,000円×9年)×12ヶ月/12ヶ月×100%}-1円=24,999円
※1円(備忘価額)までの償却となります。
年分 | 平成19年分 | 平成20年分 | … | 平成28年分 | 平成29年分 |
---|---|---|---|---|---|
(期首)未償却残高 | 1,000,000円 | 925,000円 | … | 125,000円 | 25,000円 |
減価償却費の額 | 75,000円 | 100,000円 | … | 100,000円 | 24,999円 |
(期末)未償却残高 | 925,000円 | 825,000円 | … | 25,000円 | 1円 |
2. 平成19年3月31日以前に取得した資産 → 改正前と同様の計算
【計算式】
減価償却費の額=(取得価額×残存価額)×償却率×使用月数/12ヶ月×事業専用割合
※「償却率」は、減価償却資産の耐用年数によって異なります。
※残存価額=取得価額×残存割合(10%)
【計算例】
取得価額:1,000,000円 取得年月日:平成19年3月31日 耐用年数:10年
償却率:0.1 事業専用割合:100% 残存割合:10%
※減価償却費
【平成19年分】
{1,000,000円-(1,000,000円×0.1)}×10ヶ月/12ヶ月×100%=75,000円
【平成20~28年分】
{1,000,000円-(1,000,000円×0.1)}×12ヶ月/12ヶ月×100%=90,000円
【平成29年分】
{1,000,000円×95%-(75,000円+90,000円×9年)×12ヶ月/12ヶ月×100%}=65,000円
※償却可能限度額(取得価格の95%相当額)まで償却します。
年分 | 平成19年分 | 平成20年分 | … | 平成28年分 | 平成29年分 |
---|---|---|---|---|---|
(期首)未償却残高 | 1,000,000円 | 925,000円 | … | 205,000円 | 115,000円 |
減価償却費の額 | 75,000円 | 90,000円 | … | 90,000円 | 65,000円 |
(期末)未償却残高 | 925,000円 | 835,000円 | … | 115,000円 | 50,000円 |
償却可能限度額に達した後、翌年以後5年間で1円(備忘価額)まで均等償却することになります
【計算式】
減価償却費の額=(取得価額-取得価額の95%相当額-1)÷5
※5年目には、備忘価額1円を残します。
【計算例】
※減価償却費
【平成30~33年分】
{1,000,000円-(1,000,000円×0.95)-1}÷5ほぼ等しい10,000円(円未満切上げ)
【平成34年分】
5年目は1円を残しますので9,999円となります。
年分 | 平成30年分 | 平成31年分 | 平成32年分 | 平成33年分 | 平成34年分 |
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(期首)未償却残高 | 50,000円 | 40,000円 | 30,000円 | 20,000円 | 10,000円 |
減価償却費の額 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 9,999円 |
(期末)未償却残高 | 40,000円 | 30,000円 | 20,000円 | 10,000円 | 1円 |
※注)平成18年分以前において減価償却可能限度額に達し、引き続き事業に使用している資産については、平成20年分から5年で1円まで均等償却する措置が適用となります。