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有床診療所の日<2013年12月>

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年11月1日更新

12月4日は有床診療所の日です。徳川實記に、江戸時代の享保7年(1722年)12月4日、八代将軍 徳川 吉宗が貧困者の病気治療のため小石川薬園内に小石川養生所(日本で初めての入院できる診療所)を作った、とあるのを記念して定められました。有床診療所は全国各地で地域医療を担っていますが、1990年には23,589施設あったのが2013年には9,471施設と減少の一途を辿り、絶滅危惧種状態です。スタッフの確保が困難であること、経営的に厳しいことが、診療所が閉鎖される主な理由です。有床診療所の入院基本料(入院費)は病院と比べて安く設定されている(およそ半額)ため、入院を身近に安く提供できますが、診療所の経営を圧迫し、閉鎖に追い込まれる原因にもなっています。

磐梯町医療センターも有床診療所です。磐梯町が設置した町の施設ですが、公益社団法人地域医療振興協会が管理委託を受けて運営しています。地域医療振興協会は、遍く医療サービスを提供することを目指して活動しています。運営困難な僻地の医療機関に医療スタッフを派遣して運営することは活動の中心で、円滑に、持続的に行えるよう、努力・工夫しています。しかし各医療機関に財政的補助はないので、運営が厳しいことは磐梯町医療センターも例外ではありません。安定的な医療サービスを継続して提供させていただくためには、皆様のご理解とご協力が何より大切です。

磐梯町医療センターの入院設備は一般病床として許可を受けており、急性疾患での入院を目的としています。昨年1年間に、延べ168人の入院があり、その95%は緊急入院でした。入院理由は、主に在宅療養中または「りんどう」入所中の肺炎、尿路系感染、脱水、褥瘡の治療で、在宅療養の後方医療機関として機能しています。緊急入院を受け入れるためには常時空床があることが必要ですが、入院が必要な方がおられても空床がなく受け入れできないことがありました。入院施設として機能するため、入院の目的が達成されれば速やかな退院をお願いします。長期入院により悪化する病気があることも最近わかってきました。しかし、家が寒い(冬)または暑い(夏)、介護ができない、心配などの理由での入院希望や、ご家族の「ずっと入院させておいてほしい」との希望で退院に同意していただけないことがあります。これらは介護施設に入所の理由にはなっても医療機関への入院理由としては認められません。家で生活できない状況があれば緊急避難的に入院していただく場合もありますが、医療機関の評価が厳しくなってきますので、病床設置目的を逸した入院が多いと将来病床を存続できなくなる可能性もあります。

私たちは、限られた人員と設備で皆様の希望に添えるように努力しておりますが至らず、お叱りやご不満の言葉をいただきます。御希望に添えず申し訳ありません。御理解をお願いいたします。専門科で行う検査や治療は当施設では行えません。待ち時間が長い、診療を予約制にしてほしいとのご意見も頂きますが、いつでも受診していただく機会を確保するため、あえて主治医を決めず予約診療も行っておりません。外来の受付終了時刻を過ぎると一部の検査はできず、スタッフの数も減って待ち時間が長くなります。診療終了間際の受診にならないよう余裕を持ってお越しください。

診療所は医師が常駐する義務はありませんが、いつでも対応できるよう、私たちは医師常駐体制をとっています。しかし、時間外診療はできる検査や処置、処方できる薬が限られるため、緊急性の判断と応急処置のみとなり、通常外来の代わりにはなりません。緊急受診を希望された場合、ご自身での処置をお願いすることもあります。例えば、怪我や火傷でまず水で洗ったり冷やしたりする処置だけで回復し、逆にこの処置なしに受診なさると治療効果が落ちる場合などです。当施設に治療手段がなく他の医療機関へ紹介となる場合、こちらへお越しいただくと治療開始が遅れて回復が望めなくなるときは、直接他医療機関の受診をお願いすることもあります。

特定の薬の処方を希望して受診される方もおられますが、益より害が大きいと予想される場合ご希望に添うことはできません。他医で治療を受けておられる場合、必ずお薬手帳などをご持参ください。お伝えいただいた情報が誤っていると、間違った診断や不適切な治療に至り危険です。

磐梯町医療センターが将来にわたって存続できるよう、今後も譲り合いの心で適切に、有効に利用していただけると幸いです。


磐梯町医療センター 医師 木村 佳弘

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