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誤嚥性肺炎と口腔ケアについて<2013年8月>

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年11月1日更新

みなさんは「誤嚥性肺炎」という病気をお聞きになったことはありますか?65歳以上の高齢者の死亡原因は、1位は「がん(悪性新生物)」、2位「心疾患」、3位「肺炎」、4位「脳血管疾患」で、近年では肺炎が4位から3位になりました。肺炎の死亡率の中で高齢者の割合は非常に高く、肺炎死亡者の9割以上が65歳以上の高齢者です。

しかし、ひと言で「肺炎」と言っても様々な原因がありますが、高齢者の肺炎の7割以上が「誤嚥性肺炎」と言われています。 東北大学病院の嚥下(えんげ)性肺疾患研究会が行った高齢者の肺炎に関する調査によると、2004年から1年間の全入院肺炎患者(575件)の肺炎全症例のうち、約66%が食物や唾液が誤って気管内に入ってしまうことによる「誤嚥」が原因でした。「誤嚥性肺炎」は、嚥下機能が低下する高齢者は特に気をつけなければいけない病気です。

「誤嚥」って?

私達は普段何気なく食べたり飲んだりしています。あまり疑問も持たずに食べて生きているわけですが、これは生まれてから乳を飲み始めて離乳食で練習して徐々に獲得したものです。もし「食べたくても舌やのどが思うように動かなくて食べられない、飲み込めない」ということになったらどうでしょうか。また、口から上手に食べているように見えても、実際は食べ物の一部が肺のほうに流れ込んでいるかもしれないと考えたことはあるでしょうか。

水や食べ物をうまく飲み込めなくなることを「嚥下障がい」と言います。「嚥下障がい」になると栄養が摂れなくなり栄養失調を起こしたり、肺炎などの呼吸器の病気にかかってしまいます。 嚥下障がいは原因によって3つに分けられます。

  1. 腫瘍やその手術後、炎症などにより飲み込むときに使う舌やのどの構造そのものが障がいされている場合
  2. 構造物の形には問題がなくても、それを動かす神経・筋肉などに原因がある場合
  3. 心理的な原因が関与している場合

また、医療行為によって起こる「嚥下障がい」もあり、薬の副作用や経管栄養チューブ、手術操作などが原因となることがあります。

そして、嚥下障がいは飲みこむことだけが障がいされたことを指す言葉ですが、嚥下障がいによって食物や異物などが肺へ入ってしまうことを「誤嚥」と呼びます。脳血管障がいのうち脳梗塞の患者さんは肺炎の発症が数倍高いとの報告もありますが、おそらく飲みこむ前の食物の認識や口への取り込み、咀嚼・嚥下障がいにより引き起こされる「誤嚥」が原因である確率が高いと思われます。また、高齢者は嚥下反射、咳反射の低下により異物を排除する力が低くなっているため、異物が気管に入りやすく、さらに抵抗力や免疫力の低下から、「誤嚥性肺炎」になりやすいと言われています。

日常問題なく生活されている方は少量の不顕性誤嚥(むせることなく誤嚥してしまうこと)でも唾液に含まれる細菌が少なく免疫反応で処理され、肺炎は免れます。ところが、歯周病や口腔衛生状態の不良の人は歯垢(歯や入れ歯に付着した磨き残し)内に多量の病原細菌が存在しており、唾液から肺へ到達した細菌は免疫反応で処理不能になると肺炎を引き起こします。口腔衛生状態が良くなかったり、虫歯や歯周病が進行している高齢者の方は 肺炎を発症するリスクが高いという報告もあります。

誤嚥性肺炎の予防、対策

「誤嚥性肺炎」の原因は様々ですが、対応法の多くは原因によらず共通しています。こうした肺炎を予防する為にも、日頃から口腔ケア(歯と歯肉のブラッシング、入れ歯の洗浄など)を行い常に口の中を清潔に保つことが効果的です。また、老人保健施設に入所されている方や病棟に入院されている方、あるいは在宅で寝たきり状態の方や経管栄養の方で一人では口腔ケアができない方は、「誤嚥性肺炎」により注意が必要です。通常の口腔ケアだけではなく、基本である歯のブラッシングや入れ歯の洗浄以外にも上あごの粘膜や舌の清掃も行う必要があります(口腔内が乾燥していたり、痰が固まって付着している場合、肺炎の原因になりやすいです)。

しかし、食べかすや、目に見える箇所の歯垢除去だけでは口の中の細菌を減らすには不十分です。歯垢が石灰化してできた歯石は容易に除去できず、基本的な歯のブラッシングだけでは落としきれません。また義歯(入れ歯)による圧迫や摩擦によって引き起こされる粘膜病変は、歯科でなければ処置ができません。様々なケースに対応するには、歯科診療室での治療や口腔ケアが必要です。

磐梯町医療センターの歯科では、嚥下機能を強化する運動やマッサージ、口腔内の乾燥を防ぐための唾液腺マッサージなどもご自宅で実践してもらえるように指導を行っております。口腔ケアや定期健診も含め、誤嚥性肺炎予防に興味がある方はぜひ歯科へお立ち寄りください。


磐梯町医療センター 歯科医師 田部 理彦