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風邪やインフルエンザから身を守るために<2012年12月>

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年11月1日更新

冬がやってきました。寒く乾燥した冬には、風邪が流行します。風邪をひいたら風邪薬を飲んで風邪を治せばよい、でしょうか。

残念ながら、風邪に限らず、本当の意味で「病気を治す」薬はありません。病気を治すのは、自分自身の治癒力です。

薬ができることは、

  1. 治癒しやすい体の環境を整える、
  2. より大きな障がいに至る危険を減らす、
  3. 病気の苦痛を軽減する、
  4. 病気による生活上の支障を減らす、

のいずれかです。ドラマ「チャングムの誓い」で、主人公は「病気は、病人自身が治すもの」と言っていましたが、これは現在も同じです。この事実は、体が本来持っている治癒力以上に病気が早く治ることはないことも意味します。

風邪は、種々のウイルスによる上気道感染症です。ウイルスを殺す薬はないので、風邪を治す薬は存在しません。風邪薬は、先の(3)、(4)の効果があるだけです。風邪の症状(発熱、咳、喀痰、鼻水、食欲不振、下痢、嘔吐など)は、体がウイルスを殺したり早く体外に追い出したりするために必要な防御反応なので、症状を抑えると治癒が遅れます。それでも、免疫に異常がない人は、一週間程度で自力で治癒します。

ところが、風邪薬で症状が軽くなったことにより、「治った」と錯覚して、休まずに仕事を続けたりすると、肺炎などの重篤な病気に至ったり、周囲の人にうつす危険が大きくなります。「風邪は万病のもと」と言いますが、薬で治療しないと重大な病気になるのではなく、風邪薬で治ったつもりになると危険だという警告と、殆どの重大な病気の初期症状は風邪と区別がつかないので、風邪と思って軽く考えずにその後の経過をみることが重要、という意味です。

女の子が震えているイラスト

風邪に抗生物質は効きません。風邪のために傷害された気道粘膜に細菌が混合感染した時だけ効果が期待できますが、混合感染のない時に抗生物質を使うと、常在菌(病原菌の侵入を防ぐバリアの働きをしてくれている)を殺してしまい、却って感染に弱くなります。全ての薬には副作用があり、例えば、スチーブンス・ジョンソン症候群(失明や死亡することもある恐ろしい皮疹)の最も多い原因は、抗生物質と解熱鎮痛薬(市販の総合感冒薬なども含む)です。

抗生物質を使うと咳喘息が増えるという指摘もあります。気道粘膜が乾燥するとウイルスや細菌に対する抵抗性が弱くなるので、水分補給は重要で、マスク着用も気道乾燥を防ぐため有効です。しかし、点滴は、脱水が著しい場合か、嘔気・嘔吐のために口から水分補給ができない場合以外、効果はありません。もともと持病のない人は、「風邪かな?」と思ったら、薬を飲むより、まず水分補給して休み、二~三日症状の変化をみるほうが得策なことが多いのです。もちろん、合併症や似て非なる病気を早く発見するため、早めに受診していただくことは重要ですが、薬は使わずに寝ているのが一番、という結論になることもあります。

インフルエンザも症状の激しい風邪の一種です。抗インフルエンザ薬はありますが、ウイルスの増殖を抑えるだけで殺すことはできず、最終的に「治す」のは、自分の免疫機能なので、治癒に要する時間は薬を使わなくても同じです。薬を使うと症状は早く消えるので、治癒していないうちに仕事や学校に行く人がいて、結果的に合併症を起こしたり、周囲にインフルエンザをひろげることが危惧されます。

「予防投与」は、特殊な場合に限り許可されていますが、殆どの方は該当しません。抗インフルエンザ薬はインフルエンザ以外には全く効果はないので、確定診断なしに使うと副作用のリスクを負うだけです。日本は、世界一のタミフル消費国で、一時期世界の生産量の約七割を使っていました。インフルエンザに関連した小児の異常行動のほとんどが日本で発生していることは、抗インフルエンザ薬の使用に関係するようです。

私たちは、インフルエンザにかかると当たり前のようにタミフルやリレンザなどを使いますが、日本の当たり前は、世界から見ると異常である一例です。抗インフルエンザ薬を使う時は、使用量・期間を守って最後まで使い切り、少なくとも五日間は学校や仕事を休むことを厳守してください。インフルエンザから自身を守る方法は、バランスよい食事と十分な睡眠・休養、水分補給と手洗い・うがいの励行、乾燥を防ぎ、マスクを着用、禁煙などの日々の地道な努力と予防接種以外にありません。

 

磐梯町医療センター 医師 木村 佳弘