合わない入れ歯を無理して使っていませんか?<2012年1月>
入れ歯が歯茎にあたって痛い、話すと入れ歯がはずれるなど、入れ歯のトラブルは数多く存在します。使っていれば馴染んでくると言われています、それは入れ歯を作った歯科医院で調整を行いながらのことであって、合わない入れ歯をいくら使っていても馴染んではきません。
合わない入れ歯を使い続けると、どんな危険があるのでしょうか。痛みがあると、痛くない位置で噛もうとします。このようなことが長く続くと、顎の骨が部分的に吸収して、入れ歯はますます合わなくなります。また、傷ができたままにしていると、そこから細菌が感染し、歯茎や顎の骨に病気を起こします。その結果、顎の骨が不規則な形になり、歯茎がブヨブヨして、新しい入れ歯を作っても、落ち着かない入れ歯になってしまいます。
入れ歯は、一人ひとりの口に合った、オーダーメードの人工臓器なのです。合わない理由は人それぞれあり、治療法も様々です。たとえば、うまく噛めない場合は、歯茎との適合や人工歯の噛み合わせ、歯並びの位置など、複数の要因が考えられます。また、舌を噛んだり、頬の内側を噛むことがあります。その場合は、噛み合わせが低すぎたり、人工歯の位置が不適切なことが理由です。これらの場合、適切な治療を行えば容易に改善されることが多いのです。
医療センターで作る入れ歯は大学と同じ製法で行っています。そのため、製作には1か月程度かかります。
まず、1回目に大まかな型取りをします。この型から模型を製作し、トレーという型取り専用の型枠を作ります。2回目はこのトレーを使って、精密な型取りをします。3回目は噛み合わせの高さを決めます。このとき、昔に歯があったときの噛み合わせの位置を再現します。また、顔や口元に合った人工歯を選びます。患者さんの希望で歯の形や色を変えることができます。4回目は人工歯を並べた仮入れ歯を合わせ、美しさと噛み合わせの最終確認を行い、5回目で完成となります。
できあがった入れ歯は少し大きく感じられる方が多いと思います。それは、噛む力を粘膜の広い面積で受けるように、できるだけ広く作るためです。最初は大きさに慣れる必要がありますが、数ヶ月で慣れてきます。その間に、噛み合わせや歯茎に強く当たる部位を調整し、患者さんの口にきっちり合った入れ歯にしていきます。
自分の口に合った入れ歯を使うことによって、食事を楽しめるようになり、健康な生活を送れるようになります。噛むという行為が脳を活性化させ、運動能力も向上させるという報告もあります。適切な入れ歯を使用することのメリットはとても多いのです。
入れ歯についてご不明な点や質問などがありましたら、医療センターにご連絡ください。
奥羽大学歯学部附属病院 今関 肇