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高血圧の薬について<2011年11月>

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年11月1日更新

診療所で外来をやっていると高血圧の患者さんが大変多いことに驚きます。2006年の国民栄養・健康調査によると40歳から74歳の日本人のうち男性の6割、女性の4割が高血圧だということです。この高血圧患者のうちどのくらいの人が治療を受けているかといいますと、せいぜい2割程度だそうです。

血圧チェックをしているイラスト

この割合が低い原因としては、自覚症状が少ないことが第一にあると思うのですが、もうひとつ見過ごせないのが「高血圧の薬は一生飲まなくてはならない」という認識ではないでしょうか。

今回は、高血圧のお薬にはどのようなものがあるのか、高血圧のお薬は一生飲まなくてはいけないものなのかについてお話したいと思います。

血圧とは

血管の中の圧力ですが、水道管の内圧と全く同じというわけではありません。水道管の圧は流れる水の量が増えれば上がります。流れる水の量はポンプの働きで決まります。

しかし、人間の血管は伸縮するので、血圧はポンプである心臓の働きだけでなくそのあと血管がどのように伸縮するかによって決まります。また、血液は動脈から静脈、そして心臓にもどるという形で循環しています。ですから、血液の量が余分だと鬱滞して血圧は上がってきます。

結局のところ、血液の量が多く、心臓が血液を大量に送り出し、血管が広がらなければ血圧は上がります(心不全など例外的状況はありますが)。つまり、高血圧の薬はこれの逆をやるわけです。

利尿剤は血液の量を減らす薬です。

血圧を下げる力は強く、ほかの薬ではダメで、これに変えたらうまくいったというケースもあります。ただし、高尿酸血症や糖尿病が悪化したり、脱水になってしまうこともあります。

心臓を休ませるのがβ遮断薬です。慢性の心不全のように心臓の力が低下した状態では心臓を休ませるこの作用が役に立ちますが、気管支を締める働きがあるので、気管支が開いていないと困る喘息患者に対しては使用できません。

血管を広げる薬は、さまざまな種類がありますが、有名なものは4つあります。

  1. ACE阻害薬とARBは血管に収縮の命令が行くのを邪魔することで血管を広げます。重い副作用があまりないだけでなく、腎臓や心臓を保護してくれたり、インスリンの効きをよくしてくれたりします。
  2. カルシウム拮抗薬は、筋肉が収縮するのに必要なカルシウムの働きを邪魔することによって血管を広げます。重い副作用がすくない割には血圧をしっかり下げてくれる印象があるので、高血圧の薬で最もよく使われています。
  3. α遮断薬は、交感神経が血管を締めるのを邪魔して血管を広げる薬です。血管と同時に尿道を締める筋肉も緩めるので、尿の出の悪い患者さんによくつかわれます。

以上のように、さまざまな高血圧の薬がありますが、忘れてはならないのは生活習慣を変えれば結構血圧は下がってしまうということです。

多くの患者さんの場合、動脈硬化(で血管が広がらなくなってしまうこと)と塩分の取りすぎ(で血液の量が増えてしまうこと)が高血圧の原因であり、これを改めれば血圧はさがってくるはずです。

すると、薬はもはやいらないわけで、「一生薬を飲み続ける」ということはなくなるわけです。ですから、「高血圧の薬は一生飲み続けなくてはならない」というのは理屈上間違った意見だということになります。

しかし、これは理想論であることも事実です。血管は年をとるとそれだけ硬くなります。この一点を取っても高血圧から抜け出すのは容易ではありません。理論上は薬をやめられるはずですが、現実にうまくいくケースはそんなに多くないということです。

それでは、高血圧の薬について私たちはどのように考えればいいのでしょうか?

高血圧の薬を飲んでいただく理由は、高血圧のままだと脳卒中や心筋梗塞になる危険が増し、血圧を下げるとこれらの病気になる確率が明らかに減るということです。

ですから、一生飲むかどうかはあまり問題ではないのです。現状では、いつかやめることを目標にしながら血圧の薬を飲んでいくのが一番いいつきあい方だと思います。

 

磐梯町医療センター 医師 中山 総一郎

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