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認知症のはなし<2011年9月>

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年11月1日更新

4月から、及川先生のあとを引き継いで、「りんどう」3階の認知症専門棟を担当させていただいております。「りんどう」では、斉藤先生、及川先生はじめスタッフの方々が、認知症の患者様の症状が改善し、よりよい生活を送れるように努力と工夫を重ねてこられましたが、なお問題が山積しており、苦悩しながらの介護が続いております。

認知症は、脳の神経細胞が障がいされて死ぬために減少し、正常な中枢神経機能、特に知的能力が低下する病気の総称です。60歳以下で発症することは稀ですが、85歳ではほぼ3人に1人が認知症の患者さんです。認知症は、人生50年であった時代にはなかった病気で、長寿になったことにより病気として認識されるようになりました。

認知症にはいくつかの型がありますが、いずれも次第に記憶力や判断力が障がいされ、そのために社会生活に支障をきたします。症状は、障がいされる脳の部位が拡大するのに伴って徐々に進行し、性格が変わり、突然大声をあげる、不穏、妄想、徘徊、反社会的行動、暴力行為、暴言、介護抵抗、不潔行動、などの周辺症状(行動・心理症状(BPSD)が現れます。さらに、脳全体の神経活動が衰えると、外界への反応や自発的な動きが少なくなる一方で痙攣が起こることもあり、自分で食事をとることもできなくなって痩せ衰えてきて、生命の維持も困難になってきます。「好々爺」は認知症の一つの型で、「老衰」の一部も、「認知症」に伴って身体機能が衰えた結果なのかもしれません。

認知症は、脳の神経細胞が障がいされて死に、正常に働く神経細胞の数が減るためにおこります。脳の神経細胞は生後一度も細胞分裂して増えることはないため、障がいされて死ぬと、数は減る一方です。しかし、もともと脳細胞の数や能力には余裕があり、死んだ細胞の機能をほかの細胞が担うことにより、脳全体の機能を維持できる代償能力があります。認知症は、この代償能力が限界に達したときに「発症」したと認識されますが、実際にはもっと前から始まっていたことになります。したがって、発症すると回復することはなく、徐々に進行していくことは避けられず、治療法もありません。

認知症の初期には進行を遅らせる薬があり、知的能力が一時的に改善し、在宅生活期間を延ばすことができます。しかし、薬は、生き残っている神経細胞の働きを一時的に高めるだけで、病気を治すことはできません。認知症が進行して末期になると、BPSDが出現して在宅介護は困難になるので、施設での介護が必要になります。この状態に効果がある薬はなく、初期には有効な薬もBPSDを悪化させることもあり、多くの場合使えなくなります。

BPSDは、患者様の不安や混乱、環境要因が関与していることも多いため、これらの要因を分析し、改善すれば、BPSDの症状を抑えることができることもあります。患者様にとって心地よい刺激が適度にある環境が認知症の症状改善に役立ちそうだと介護スタッフは感じています。私たちは、患者様の日内リズムや行動パターンを観察して、認知症の症状改善に役立ちそうな刺激を探しています。日々入所者の皆様に接している看護・介護スタッフの「現場の勘」が大事だと思います。家族の方々の面会は心地よい刺激であることが多いので、頻回に面会していただくことは何よりの治療法です。BPSDのなかには向精神薬や漢方医学的治療が有効な場合もあるため、症状に応じた薬剤治療も行います。これらの方法をうまく組み合わせれば、BPSDがなくなって穏やかになり、在宅生活が可能になる患者様もおられます。

入所者の皆様が穏やかに在宅復帰されることが施設介護の目標ですが、現実は厳しく、実現できる患者様は少ないのが現状です。それでも私達は、入所者の皆様が穏やかに尊厳をもって人生の最期を自宅で過ごされることを願って介護を行っております。

認知症の予防法はわかっていませんが、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、喫煙や過度の飲酒は認知症の危険を高めることが知られています。つまり、認知症の予防は、禁煙と生活習慣病の予防・治療です。体を動かし、趣味や生きがいを持つことは脳に快適な刺激を与え神経細胞を元気に保たせるようです。常にこまめに体を動かし、物事に興味を持ち続け、暴飲、暴食、過食を避け、貢献と発見を喜びとする創造的な生活を心がけることが重要だと思います。

 

磐梯町医療センター 医師 木村 佳弘