ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 分類でさがす > 健康・福祉 > 健康・医療 > 医療センターだより > インフルエンザの漢方治療<2009年9月>

インフルエンザの漢方治療<2009年9月>

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年11月1日更新

新型インフルエンザが流行しています。

インフルエンザの治療薬として内服薬のタミフルや吸入薬のリレンザが使われますが、精神症状などの副作用やこれらの薬剤が効かない耐性ウィルス出現などの問題が懸念されます。

今回はインフルエンザの漢方治療について紹介したいと思います。

後漢末期~三国時代(西暦200年頃)の中国医学の古典に「傷寒論」という伝染病に関する書物があり、傷寒(ほぼ等しいインフルエンザ)について記されています。

漢方では、ウィルスに直接作用する薬を用いるのではなく、患者側の体調を整え、外から体に入り込もうとするウィルス(邪気)を体外に排除しようとする体の抵抗力(正気)を高めることを目的にします。風邪をひくということを、この正気と邪気のバランスで考えます。すなわち、正気が強ければ風邪をひかず、正気も邪気も強ければ、発熱などの闘病反応が強く現れます。正気が弱く邪気が強ければ、病気の制御ができません。インフルエンザを予防するためには、十分な栄養と休息をとり、正気を蓄えておく必要があります。(下図参照)

正気と邪気のバランス

また、「傷寒論」では、ひき初めの時期には病邪(ウィルス)が表(体表=皮膚や首筋、筋肉、関節)にあると考え、ザワザワしたり、首筋が凝ったり、関節痛や筋肉痛がみられます。この時期には、「麻黄湯」や「葛根湯」等を内服し、発汗、発熱を促し、風寒を発散し、寒邪を除くことが良いとされます。ショウガを少し擦り、これらの薬と合わせて飲むと、より発汗効果があがります。

西洋医学でも同じ考え方ですが、風邪の症状である熱は病原体をやっつけるため、咳は病原体の侵入を防ぎ、痰などを追い出すため、鼻水も病原体やゴミなどの侵入を防ぐため、下痢は病原体や悪い食物の早期排泄のため、体にとって必要なものと考えます。熱を下げたり咳を止めたり、下痢を止めたりする治療はかえって治癒を遅らせる可能性があると考えなくてはいけません。

したがって、インフルエンザの治療でも、病初期には熱を下げるのではなく、むしろ熱を上げて、ウィルスを排除し増殖を抑制する治療を考えます。「麻黄湯」や「葛根湯」を内服した後、熱が上がるのはこのためです。但し、熱性けいれんの既往のある方や、元々体力がない方、合併症を持っている方など、熱を上げられない方もいますので、注意が必要です。

高齢者や胃腸の弱い方には「麻黄湯」や「葛根湯」ではなく、「桂枝湯」を用います。

桂枝とはシナモン、葛根とはクズの根です。シナモンティーは体を温め、発汗、健胃作用があります。葛湯(くずゆ)は風邪の寒気をやわらげ、熱を取り、喉の渇きを癒し、下痢などにも効果があるとされ、小さい頃は良く飲まされました。これも生活の知恵なのでしょう。

インフルエンザが長引いた時には、体力も徐々に低下し、病邪も表(体表)から裏(肺や消化管)に入っていきます。この頃には、「小柴胡湯」や「柴胡桂枝湯」等の炎症を抑える処方を行います。

医学の進歩により、迅速検査によるインフルエンザの診断や、抗ウィルス薬による治療が可能になりましたが、それにより「新型」ウィルスという新たな脅威が生まれました。しかし、1800年も前の昔からインフルエンザの型にとらわれない漢方治療が存在し、受け継がれてきたことは実に興味深いことです。

磐梯町医療センター  齋藤  充