楽しい食生活を送るために [14] 入れ歯が入るまで
皆さん、入れ歯は二、三回の治療で出来上がると思っていませんか。回数が少なく早く出来れば、それにこしたことはありません。でも、精度のよい入れ歯を作るためにはそれなりの行程を経なければなりません。そこで今回は入れ歯が入るまでの行程をお話ししたいと思います。
入れ歯を作るには、口の中を再現した精密な模型が必要になります。そのために、先ずおおまかな型を取り模型を作ります。この時点ではまだ模型の精度はよくありません。今度はこの模型から患者さんの口に合った型取り用のトレーという道具を作り、それで精度の高い型取りを行い、精密な模型を作ります。
この模型から噛み合わせを取るための道具を作ります。部分入れ歯の場合は金属の骨組みも同時に作ります。次の診療で咬み合わせを取りますが、咬み合わせが不安定な場合は、二度に分けて、より精度の高い咬み合わせを取ります。この場合は、一回分の治療回数が余計にかかります。上下の顎の咬み合わせをもとに模型を咬合器という器械に付けます。この模型に人工の歯を並べておき、次の治療時に人工の歯並びを合わせ、咬み合わせの確認を行います。この時点で大丈夫であれば次の治療日には新しい入れ歯が入ります。
これまでの診療での行程を軽くおさらいします。
- おおまかな型取り
- 精密な型取り
- 咬み合わせを取る
- 歯並びを合わせる
- 入れ歯の装着
入れ歯を装着したらすぐに噛めるわけではありません。痛くなく強い力で噛むまでには何度か調整が必要です。
このように、見栄えがよく、噛む機能を果たし、患者さんの食生活を支える入れ歯が入るまでには、これだけの行程が必要になります。少し時間はかかるかもしれませんが、根気よく通ってみてはいかがでしょうか。
奥羽大学歯学部附属病院 関根 貴仁