楽しい食生活を送るために [12] 大きい入れ歯小さい入れ歯
医療センターの歯科で新しい入れ歯を作ったら、今まで使っていた入れ歯よりも大きくて、内心不満を持たれた方はいませんか。小さい入れ歯はなじみやすく、大きい入れ歯は邪魔なものと思っていませんか。
歯科医師の立場から言うと、小さい入れ歯は粘膜にくい込んで痛みを誘発したり、残っている歯に悪い影響をもたらすので好ましくありません。
入れ歯には総入れ歯と部分入れ歯がありますので、今回は部分入れ歯の話をします。部分入れ歯は人工の歯とそれを支えるピンク色の床の部分で構成され、入れ歯を歯にとめるための金属製のバネが付いています。これらのうち、咬む力を支えるのがピンクの床の部分です。
この面積が狭いと部分的に力が集中して粘膜にくい込みます。硬い入れ歯と骨の間に挟まれた粘膜は傷つきやすく、痛みの原因になります。また、床の部分が狭いと食物を噛むたびに揺れて、金属製のバネをかけている歯を揺さぶります。このときに歯が受ける力は、歯を抜去するときと同じ方向になります。
そのため、歯の周囲の組織が受けるダメージは大きく、歯がぐらつく原因になります。このような歯に悪い影響を防ぐため、私たちは入れ歯の床の部分を広めに作り、粘膜にかかる力を広く分散させるようにしています。
入れ歯の大きさを決めるのは口の型を取る(印象)ときです。温めたコンパウンド材で入れ歯の縁となる部分を少しずつ形作っていきます。
ちょっと時間がかかりますが口の形に合う入れ歯を作るためには欠かせない治療です。適切な大きさの入れ歯では、顎の粘膜や残っている歯を保護しながら、痛くなく、よく噛めるようになります。
私達の作ったやや大きめの入れ歯は、初めは慣れにくいかもしれませんが、おおよそ三か月程度で慣れます。何度か調整を重ねて、自分に合った入れ歯に仕上げてもらってはいかがでしょうか。
奥羽大学歯学部附属病院 関根 貴仁