楽しい食生活を送るために [10]
歯周病の原因はお口の中に在る細菌です。歯垢がたまったままの状態が長く続くと、病原菌の数が増えて歯周病になります。歯周病の治療には、病原菌を除去するさまざまな方法があります。
病原菌が除去されると歯周病は治りますが、細菌を完全になくすことはできません。そのことが身体の外界から細菌が入り込んでくる病気との違いです。どんなにきれいに歯を磨いても一日一回では翌日に歯垢がついてしまいます。
したがって、歯周病の治療で、歯石取りや手術をして歯ぐきが健康になってから行う口腔ケアが重要なのです。治療後、よく歯磨きをせず、歯垢がたまったままの状態にすると病原菌が増えるため、歯周病が再発しやすくなります。
正しい歯磨き法を身につけ、それを継続して行い、病原菌を増やさないことが、歯周病の再発防止には大変重要です。
専門家による定期的な歯磨き指導と口腔ケアを数か月ごとに受けたグループと、受けなかったグループを6年間追跡して比較した研究があります。口腔ケアをしたグループでは、歯周病の再発や進行はほとんどなく、健康な歯ぐきを長期間維持していました。これに対して、口腔ケアをしていないグループでは9割の患者に歯周病の再発や進行がみられました。
この調査から、歯周病を治療した後も、自分で歯を磨くだけではなく、専門家による定期的な口腔ケアが必要なことが分かりました。このケアのことを専門的には「歯周サポート治療」と呼んでいます。
定期的な口腔ケアでは、虫歯や被せた冠のチェックも行うので、お口全体の健康を維持していくのにも役立ちます。
今回を持ちまして歯周病の連載は終わりますが、いつまでもご自分の歯で食べられる喜びが得られるように、歯を大切にしてください。
奥羽大学歯学部附属病院 宮尾 益佳