甦る古代金堂 慧日寺金堂の復元【第11回】 現地組み立て その5
壁の中塗り
5月の連休前に荒壁が打たれ、3ヶ月半の乾燥養生後、8月中旬から中塗りが行われました。
荒壁・中塗り・仕上げ塗りの3段階のうち、2段階目の工程になります。壁土には粘性の強い、均質な篩土(ふるいつち)を用い、砂とアク抜きした綿毛状のもみスサを混ぜで撹拌(かくはん)します。中塗りの段階で荒壁の下げ縄はすべて塗り込められました。この後再度乾燥期間を設け、最後に仕上げの漆喰塗りが行われます。
1.中塗りに混ぜるアクヌキスサ 2.壁土・砂・スサに水を加えます
3.ミキサーで練ります 4.調子を確認します
格伏せ土を塗ります 荒壁の下げ縄を塗り込みます
中塗り後の壁 この状態でしばらく乾燥させます
床板
慧日寺金堂は、発掘調査の結果、礎石の高さが同一でなく全体として南下がりで設置されていることが判っています。このことは、内部が土間敷きや磚敷(せんじ)きのような構造ではなく、床板を張って水平を保っていた証拠にもなっています。冬期の積雪や厳しい寒さを考えれば、むしろ床板をはるのは当然のことであったのでしょう。現地では、8月中旬から床板を張る工事が行われています。
復元金堂の床組み(束、大引根太で水平を調整します)
床板の現地調整加工
ヤリ鉋
寺社建築では、古来技術の向上に伴ってさまざまな道具が生み出されました。ヤリ鉋もその一つで、材木をチョウナなどで削った後の表面仕上げに使われました。柳の葉のような刃先で、舟底形をした削り痕が特徴です。一時その伝統が途絶えましたが、薬師寺復興に際して棟梁の西岡常一氏によって、復元されました。
今回の金堂復元工事でもヤリ鉋を用いています。