甦る古代金堂 慧日寺金堂の復元【第10回】 現地組み立て その4
一般に、日本建築のなかで最も複雑で高度な技術を要したのは社寺建築といわれています。
時代の変遷と共に、さまざまな技法が生み出され整備されていきました。例えば、建築にあたってはさまざまな部材をつないで組み上げていきますが、角度を付けて組む場合、一材でまかなえない場合、さらには別々の部材を組み合わせる場合など、いろいろな組み方やつなぎ方が必要とされます。そうした部材の組み合わせ方法を、継手(つぎて)や仕口(しぐち)と呼び、それぞれに多くの形式があります。釘やかすがいなどを用いず、部材の一部を独特の形状に削りだして、外からは継ぎ目が分からないように木材同士を接合する技術には、まさに大工技術の粋を見ることができます。
継手:一材でまかなえない場合などに、部材を長手方向に継ぐ接合方法。
仕口:二つ以上の部材を角度をもって組み合わせる方法。
「相欠(あいかき)」と呼ばれる頭貫の継手 柱と頭貫の仕口は「輪薙込(わなぎこみ)、大釘打」
屋根の四隅では、より複雑な仕口が必要とされます
丸桁に用いられている「鎌継(かまつ)ぎ」と呼ばれる継手の技法
頭貫・桁・内法長押の継手については、修理工事などによって判明した、唐招提寺金堂や当麻寺(たいまでら)本堂前身堂などの技法にならって、二間材を主として一間材を加える手法を採りました。
架構(かこう)
社寺建築では、特に屋根を支持する梁組(はりぐみ)などを限定して「架構(かこう)」と呼ぶ場合があります。これには大きく二つの考え方があって、ひとつは架構を意匠的に扱って下から見せる方法、もう一つは天井を張り巡らして架構を見せない方法があります。前回で紹介したように、復元金堂では前者の「化粧屋根裏天井」という様式を採用しています。
下の写真は母屋部分の架構の状況で、最も基本的な「叉首組(さすぐみ)」と呼ばれる形式です。