甦る古代の伽藍 慧日寺中門の復元【第4回】 木工事 その2
軸部の組立て 12本の柱が立柱すると、それぞれの柱の頭を頭貫という材で繋いでいきます。中門も金堂と同様に、外側の柱が約2cmほど長い「隅延び」の技法を用いています。そのため、頭貫は緩やかに反って設置されました。
頭貫(かしらぬき)
柱の頂部に溝を掘って、そこに貫材を落とし込んで繋い でいきます。木と木の組み合わせだけですが、それぞれが がっちりとかみ合って構造的に強くなって、建物の軸部と しての強度を増す役割を果たしています。
そのため、例えば地震の場合などでも、さながら葦のよ うに波打ちながらその揺れを吸収し、結果として大きく崩れたり曲がったりしないわけです。「 -柳に風折れなし-」 貫(ぬき)構造が、鉄筋や鉄骨造にも勝るといわれる所以は、まさにその柔軟性にあるのです。
頭貫で繋いだ柱
平三斗(ひらみつど)
柱上に組物が組まれて桁材を受けます
組物・架構・天井 柱が立てられ頭貫が回されると、柱上には桁材を支えるための組物が組まれます。中門の組物は、金堂と同様類例にならって平三斗を採用しました。
虹梁(こうりょう)、二重虹梁蟇股(にじゅうこうりょうかえるまた)
また、親柱と前後の控柱はそれぞれ虹梁(こうりょう)で繋ぎますが、その上に棟木を受けるためもう一つ虹梁を重ねる「二重虹梁蟇股(にじゅうこうりょうかえるまた)」と呼ばれる架構形式を採りました。天井は、親柱の前後それぞれに切妻(きりつま)形の化粧屋根裏をつくる三棟造としました。
親柱と控柱は虹梁(こうりょう)で繋ぎます 二重虹梁蟇股(にじゅうこうりょうかえるまた)
蟇股(かえるまた)
柱上に組物が組まれて桁材を受けます
虹梁の上にもう一つの虹梁を載せる場合など、上からの荷重を支えるために設置されたのが「蟇股(かえるまた)」と呼ばれる構造材です。蛙が足を踏ん張ったところを正面から見た形に似ていることからその名が付いたと言われています。時代によって形が異なるため、建物の年代を判断する上でも役立ちます。
三棟造(みつむねづくり)
三棟造では天井の断面形がW字状になります
三棟造は、親柱を中心に、前側と後側にそれぞれ切妻(きりつま)形に垂木たる(き)を組むことから、天井を見上げると棟が二つあるように見え ます。これに本来の棟を合わせて三棟となることから、三棟造と呼ばれています。
甦る古代の伽藍 慧日寺中門の復元シリーズ
- 第1回 基礎工事
- 第2回 復元中門の仕様・立柱・壁工事
- 第3回 木工事 その1
- 第4回 木工事 その2
- 第5回 木工事 その3 壁工事-中塗り
- 第6回 壁工事-漆喰仕上げ、屋根葺き工事
- 第7回 屋根葺き工事
- 第8回 中門復元工事竣工